対象恒常性と安心感の関係について知りたい
いつも不安を感じることが多く、安心する方法を知りたい
少しのことで動揺したり不安になりやすい人の場合だと、
「自分はどうして安心感を感じにくいのだろうか」
と悩みやすくなってしまいますよね。
本記事では、安心感を感じるための方法と対象恒常性について解説していきます。
対象恒常性とは何か?安心感を感じるための方法
安心感を感じるためには、安心感を感じられない理由をきちんと把握する必要があります。
そのためには、
- 対象恒常性とは何かを理解する
- スプリッティングという心理を理解する
この2つの理解が重要になってくるんです。
対象恒常性とは?
対象恒常性とは、
「自分の目の前から他者などの対象がいなくなっても、その対象は変わらずに存在していると思える感覚」
のことです。
幼少期には誰しもが、まだこの対象恒常性が未成熟なため、
「目の前から母親がいなくなると、泣き出してしまう」
などの現象が見られます。
しかし、大人になってもこの対象恒常性が弱い場合、安心感を感じることが難しくなり、様々な生きづらさに直面することになりやすいんです。
たとえば、ついさっきまで一緒に楽しく遊んだ友人に帰宅してからLINEを送ったが、既読が付かないという場合、
- 「嫌われたのかもしれない。そういえば、あの時の自分の態度が気に障ったのかも」
- 「あのくらいで嫌うなんて、ひどい人だ」
こうした何かをきっかけにして、その人の印象が180度ガラリと変わってしまうことってありますよね。
ここでポイントとなるのは、
「自分の中では、しっかりと相手の印象が変わった『理由』がある」
ということです。
- よく考えてみると、あの時の発言には裏を感じる
- いつも10分以内には返信をくれるのに、おかしい
このように自分の中ではきちんと理由があって、その理由に気付いたことにより、相手の印象が変わったと思っています。
しかし実はその理由は、他者から見れば、説得力のあるものではないことがあるんです。
こうした自分の中で他者の印象がコロコロ変わってしまう大きな理由の一つとして、対象恒常性の機能の弱さがあるわけです。
安心感を感じることが難しくなる理由
対象恒常性が弱い人の場合、下記のような不安に悩まされやすい傾向があります。
- 他人のことを「敵か味方か」のどちらかでしか捉えられない
- 見捨てられ不安になりやすい
- 人間不信に陥りやすい
一つずつ見ていきましょう。
1.他人のことを「敵か味方か」のどちらかでしか捉えられない
対象恒常性の弱さにより、周囲の人の印象がコロコロ変わってしまうと、相手との心のつながりが切れてしまいます。
すると、昨日まで誠実な人だと思っていた人が、急に不誠実に見えてきたりします。
それが重なると、周囲の人みなに対して、
「この人は信用して、心を開いてもよい人なのだろうか」
という疑いの目で他者を見るようになってしまいやすくなります。
その結果、他者のことを自分にとって「敵か味方か」という極端な捉え方しか出来なくなるというわけです。
また、他者を敵か味方かで捉えてしまうと、味方だと思った人に対して、精神的に依存しやすくなってしまいます。
そうなってしまうと、その相手すらも印象が変わってしまった場合に、より安心感を感じることが困難になります。
2.見捨てられ不安に陥りやすい
昨日まで信用できる友人だと思っていた相手が、急に信じられなくなるというのは、とてつもないストレスです。
対象恒常性の弱さは、あらゆる人や社会、世界に関してまで影響を与えてしまいます。
そのため、他者や社会に対して一貫性が感じられなくなり、漠然とした不安感を抱きやすくなります。
それは、人や社会、ひいては世界に対して基本的な「安心感」を持ちにくくなるためです。
たとえば見捨てられ不安に苦しむ原因も、この対象恒常性の弱さが関係しています。
>>>なぜこれほど見捨てられ不安はすぐに克服するのが難しいのか
3.人間不信に陥りやすい(強い孤独感に襲われやすい)
対象恒常性が弱いと、
「他者の印象がコロコロ変わり、他者を敵か味方かで判断してしまう」
という過程で、人間不信に陥りやすくなります。
たとえ自分は他者を信じて仲良くやっていきたいと思っていたとしても、対象恒常性の弱さにより、なかなか人を信じ切ることが難しくなります。
そうすると、安心感を感じることができなくなるため、人と接することを避けるようになってしまいかねません。
それは精神的に心を支えてくれるような、印象が安定した相手を持ちにくくなるためです。
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安心感を感じるためには、スプリッティングに気付く必要がある
スプリッティングとは簡単に言うと、
自分の中の葛藤(相反する2つの気持ち)によるストレスを軽減するために、片方の気持ちをなかったことにする心の防衛手段
のことです。
対象恒常性が弱く苦しんでいる場合、
- 他者を敵か味方かでしか捉えられず
- 見捨てられ不安が強まり
- 人間不信から孤独感に押しつぶされそうになる
このような状態では、相手の印象が急に変化した場合に、
-
「自分が悪いんだ」
-
「相手がひどい人なんだ」
という2つの相反する気持ちの葛藤が生じ、高ストレスにさらされます。
すると、そんな自分の心を守るために、スプリッティングが生じます。
スプリッティングが生じることで、他者に対して、
- 「相手は一方的に自分のことを嫌っている、避けている」
- 「悪いのは向こうだ」
このように他者を責めることで、自分のことを嫌悪せずに済むわけです。
しかし、こうして自分の心を守ってしまうと、自分の中で「他者は敵だ!ひどい人だ!」という思いから抜け出しにくくなります。
そのため、まず自分自身がスプリッティングをしてしまっていることに気付く必要があるんです。
>>>スプリッティング(分裂)とは?葛藤から自分を守る心理について
スプリッティングに気付いていく方法
自分自身のスプリッティングに気付いていくためには、
相手のことを、知り合いの第三者はどう思っているのかを想像する、もしくは実際に尋ねてみることです。
たとえば、自分から見ればひどい人でも、共通の知人から見れば、
「言葉に含みを持った嫌味を言うような人ではない」
など、自分とは全く異なる見方をしていることに気付ける可能性があります。
そして、相手を見る視点を増やすことで、
- 自分はたった一つの側面からしか相手を見ていなかったのかもしれない
- 自分にはスプリッティングが生じていたのかもしれない
- 相手のことを「敵か味方か」という極端な見方をしていたのかもしれない
このようなことに気付くことができれば、少しずつ安心感を感じることができるようになるはずです。
対象恒常性の弱さに限らず、見捨てられ不安や人間不信などは急に改善するようなものではありません。
しかし、心の知識を少しずつ知っていくことで、一歩ずつ軽減に向かっていくはずです。
そのためにも、この「対象恒常性」について、しっかりと押さえておきましょう!