「スプリッティングってイマイチよく分からない」
「スプリッティングの原因や問題点って何?」
本記事では、例を出しながらスプリッティングとは何かについて解説していきます。
また、
- 周囲から誤解されやすい
- 他人のことを「優しい人か冷たい人か」「敵か味方か」という極端な捉え方しか出来ない
このような悩みについても、スプリッティングによる作用からお伝えしていきます。
スプリッティングとは?
まずスプリッティングとは何かを簡単にいうと、心の葛藤によるストレスを軽くするために、
2つの相反する自分の気持ちのうち、片方をなかったことにしてしまう心の働きのこと
です。
たとえば、職場にAさんという苦手な上司がいたとします。
苦手な目上の人に対して、多くの人は下記のような相反する気持ちをもっているのではないでしょうか。
- Aさんと関わりたくない
(Aさんのことが嫌い) - Aさんと仕事上、関わらなくてはならない
(大人げない態度をとって、Aさんからも職場の周りの人からも嫌われたくない)
人は自分の中に「葛藤」をもち続けることは、ものすごくストレスになるものです。
この葛藤によるストレスがあまりに強すぎる場合、無意識下でストレスを軽くしようとします。
どのようにストレスを軽くするかというと、下記の2つのステップを踏みます。
- 2つの気持ちを心の中で完全に切り離す
- 2つのうち、片方だけを意識の外に追い出し、なかったことにする
これにより、無理やり葛藤を解消してストレス状態から解放させる方法が、スプリッティングになります。
スプリッティングの事例
スプリッティングは、抱えきれない葛藤のストレスから自分を助けてくれるものです。
しかしその反面、副作用とも言うべき症状をもたらす諸刃の剣とも言えるものです。
ここではスプリッティングによる、ネガティブな側面を事例として見ていきましょう。
他人にNOを言えなくなり、自己嫌悪に陥る
先ほどの職場の苦手な上司Aさんの例でいうと、2つの相反する気持ちのうち、
- 「Aさんが嫌いだ」という嫌悪感
- 「Aさんに嫌われたくない」という恐れ
スプリッティングが生じることで、「Aさんが嫌い」という気持ちだけが意識の外へ追い出されます。
すると嫌われたくないという恐れから、無意識に相手に好かれようとしてしまうんです。
その結果、相手からの欲求にNOを言いにくくなるわけです。
さらに、NOを言えない自分に後から自己嫌悪してしまう場合もあります。
他人に対して、衝動的な言動をとって誤解されてしまう
いつも「相手が嫌い」という気持ちをスプリッティングで切り離して無意識下に押し込めてしまうと、別の問題が生じることがあります。
それは、嫌だという気持ちだけが突然、出てきてしまうという問題です。
特に日常的にストレスが長い期間続いてくると、気持ちを抑圧しきれなくなる場合があります。
すると些細なストレスをキッカケにして、突然「嫌いだ」という気持ちが全面に出してしまいやすくなるんです。
- 嫌いなAさんへの大人の対応ができなくなる
- ちょっとしたイライラを態度に出してしまう
こうなってしまうと、大人の対応をすべき状況が見えなくなってしまいます。
さらに他者から見ると、衝動的な態度をとっているように見られてしまいます。
結果、周囲から誤解されやすくなってしまうんです。
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スプリッティングにより、他人の印象も両極端にしてしまう
スプリッティングは自分の気持ちに対してだけ生じるものではありません。
他者のことも「良い人」か「嫌な人」かというような一つの側面からしか捉えられなくなる場合があります。
たとえば、
いつも自分に優しくしてくれる先輩のBさん。
ある日、そのBさんに冷たい態度を取られてしまった。
その日以来、Bさんのことが怖くなり、どう接していいか分からなくなってしまった。
このように他者を自分にとって敵か味方かでしか捉えられなくなることもあります。
こうした心理の背景には、そもそもストレスを抱え込みやすい人とは、
他者を良い面・悪い面を含めた全体として捉えることが苦手
だということが挙げられます。
これは幼少期に
- 親が機嫌のコロコロ変わる人だった
- 子供の自分に対して、優しい時と怒鳴る時の落差が激しかった
このような親の元で育つと、親のことを
「優しい面」も「怖い面」もある一人の存在
というように人格全体を受け入れにくくなることと関係しています。
親のことを「優しい親」と「怖い親」というように、別々の存在としてしか認識できなくなる場合が出てくるということです。
すると、接するたびに相手の印象が「優しい人」だったり「怖い人」だったりとコロコロ変わるため、混乱することになります。
>>>毒親育ちは、現実を見るフィルターが生きづらいものにされている
相手に接するたびに、相手の印象が変わるというのは、ものすごいストレスです。
結果、自分の中で相手のことを「優しい味方」か「怖い敵」かのどちらか一方としか認識できなくなるわけです。
スプリッティングによる生きづらさ
ここまで、自分の気持ちや他者の印象を片一方に切り離してしまうための辛さを説明してきました。
しかし、スプリッティングによる生きづらさはこれだけではありません。
自己肯定感を持ちづらくなる
良い面・悪い面を統合して捉えられないということは、自分に対する評価もその都度コロコロ変わってしまうということを意味します。
- うまくいった時 →自分OK
- 一度でも失敗した時 →自分NG
(自分の良い面が切り離されて見えない)
この結果、自己評価を積み上げにくくなるため、自分の人生に対して虚無感・虚しさを強く感じやすくなります。
相手を変えようとしてしまう
一人の他人を「優しい人」と「冷たい人」のどちらか一方でしか見られない葛藤を解消する手段の一つとして、
自分の振舞いによって、相手を変えよう
としてしまう場合があります。
これはたとえば自分が相手に対して、
- 自分が下手に出る
→相手の「優しい人」の側面が出てくる - 嫌な事はハッキリNOと言う
→相手の「冷たい人」の側面が出てくる
このように思い込んでいる場合に、
相手に対して「優しい人」の側面を出してほしいと無意識に期待してしまうということです。
また、自分の振舞いによって「相手を変えらる」と思えない場合には、人間不信や困った時に他者を頼れない、などの状況に陥ることもあります。
スプリッティングは、自分の心を葛藤状態から守るために生じるものです。
心理的な葛藤が強く長く続く場合には無意識下で、強烈な不安を感じていることもあるんです。
不安ときちんと向き合う方法を知ることでも、スプリッティングを軽減していきましょう。