他人の期待に応えられない自分が、嫌でたまらない
人をがっかりさせてしまう自分を許せないと、そんな自分を責めたり落ち込んだりして苦しいですよね。
実はそんな気持ちの裏には、
「相手から見捨てられてしまうかもしれない」
という不安が隠れている場合があるんです。
本記事では、他人の期待に応えられないことを恐れてしまう原因と、その対処法について解説していきます。
他人の期待に応えられないことを恐れてしまう理由
他人の期待を裏切ってしまうことを恐れる理由、それは幼少期に、
「自分は親から必要とされている」
という愛着を手に入れられなかった可能性が考えられます。
これはつまり、何十年も前の子供時代の満たされなかった思いを、未だに引きずっていることが根底にあるわけです。
人間が幸福に生きていく上で、もっとも大切なもの──それは安定した愛着である。
愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格の最も土台の部分を形造っている。
愛着障害 ~子ども時代を引きずる人々~
幼い頃に「自分は親から必要とされている」と思えなかった人は、
「親から認められたい、愛されたい」
という満たされない思いを、ずっと抱えたまま成長してしまいます。
そうして大人になると、今度は親ではなく身近な人に対して、
- 「あの人から必要とされる自分になりたい」
- 「あの人から認められたい、愛されたい」
こうした思いを満たそうと、自分に無理をしてでも他人の期待に応えようとしてしまいます。
そしてもし他人の期待に応えられないとなれば、それは、
「自分は誰からも必要とされない無価値な存在なんだ」
そう思ってしまうから、辛く苦しくなってしまうんです。
ではなぜ大人になって、もう一人でも生きていけるのにも関わらず、そこまで他人から自分を必要とされたいという思いが消えないのでしょうか。
それは親との心の絆である「愛着」というものが深く関係しているからです。
他者との心の絆である「愛着」とは何か
愛着とは、子供が親や大切な人に対して持つ、心の絆・信頼関係・安心感のことです。
幼い頃におもに親に対して、
- どんな自分でも受け入れてくれる
- 自分が困ったときには、助けてくれる、
- 自分が悲しく辛いときには、寄り添ってくれる
こうした信頼感を抱くことができれば、子供は親を含めた全ての人に対しても、基本的に信頼感をもつことができるようになります。
しかし親に対して十分な信頼感を持つことができなかった場合、様々な悪影響がでてきます。たとえば、
- 困ったときでも、素直に他人を頼ることができない
- 他人の期待に応えられないと見捨てられると思いやすい
- ちょっとした問題でも、不安や怒りを感じやすくなる
- 自分は誰からも必要とされていないという思いに囚われやすくなる
このように子供時代に親と心の絆や信頼関係を築くことができなかった人は、その後の人生にもその悪影響を引きずることになってしまうんです。
安定した心の絆をもてるかは、その人の一生を左右する
他人に対してどのような振舞いをするかは、それぞれ色々な人がいるものです。
- 相手に気を遣いすぎてしまう人
- どんな相手でも物怖じせずに発言できる人
- 何でも相手に合わせてしまう人
- 人の期待に応えられない自分を許せない人
- 困ったときに一人で抱え込んでしまう人
こうした対人関係のパターンを見えないところで支配しているのが、愛着スタイルというものです。
これは対人関係だけでなく、認知や行動にも影響があり、その人の人格をも形成しているものです。
この愛着スタイルの違いによって、人との相性の良し悪しやこの社会での生きづらさが変わってくるんです。
不安定な愛着スタイルの人は、見捨てられ不安を抱きやすい
子供時代に親から自分を必要とされた人は、一般的には安定した愛着スタイルをもちやすくなります。
そうした人はたとえば、
「自分が困ったとき、他人は自分を助けてくれるものだ」
と心の底から信じています。だからこそ、
- 「すぐに助けを求めて、実際に助けてもらえる」
- 「親の期待に応えられない自分でも、見捨てられない」
という経験を積み重ねていくことができていきます。
一方で安定した愛着スタイルを得られなかった人は、実際に幼少期、親に助けを求めても助けてもらえなかった、もしくは「助けてもらえないに違いない」と感じやすくなります。
そのため、たとえ自分が困ったときでも、
- 他人は自分を助けてくれるものだとは思えない
- 実際に誰かに助けを求めることはせず、一人で抱え込んでしまう
- 逆に誰かに助けを求めたら、迷惑になったり拒絶されると感じている
他人の期待に応えられないことを恐れてしまう人は、上記のように、
- 他人は当てにならない
- 他人の役に立てない自分には、価値がない
という思いをもっている場合が多くあります。
これはつまり、
他人の期待に応えられない自分では、他人に迷惑をかけることになる。
そして他人に迷惑をかけるような自分では、他人から見捨てられてしまう。
このように不安定な愛着スタイルの人にとって、基本的に他人という存在は、自分の心を支えるものになっていないということです。
別の言い方をすれば、他人とはいつも自分の存在価値を脅かしてくる者ということです。
>>>なぜこれほど見捨てられ不安はすぐに克服するのが難しいのか
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期待に応えられない自分を許せないのは、相手に依存したいから
自分を犠牲にしてでも他人の期待に応えたいと思うのは、その相手に無意識に、
「自分はこんなに頑張っているんだから、私のことを見捨てないでほしい」
という要求を隠し持っている場合があるということです。
無意識のうちに相手に依存していると、自分と相手との境界があいまいになり、相手を自分の一部だと思い込みやすくなります。
そうなると、とにかく相手のために尽くそうとしてしまいます。
そしてその「尽くす」という行為にも、その裏にはやはり、
「自分はこんなに頑張っているんだから、私のことを見捨てないでほしい」
というメッセージが隠れているわけです。
だから例えば相手が少し冷たい態度だっただけでも、それを、
「自分が相手の期待に応えられないから、冷たいんだ」
と解釈してしまい、強い不安感に襲われかねないということです。
不安型の人は、他者というものを、自分を傷つけたり、非難したり、うっとうしく思う存在としてみなす傾向がある。
また自分自身についても、取り柄のない、愛されない存在と思いがちである。
そのため身近な人に依存し、その人から自分が必要とされていることを保証してもらうことで、どうにか自分の気持ちと折り合いをつけようとしている。
こうした不安定な愛着スタイルの人のことは、一般的に愛着障害と呼ばれています。
他人の期待に応えられないことを恐れる人の生きづらい特徴
愛着障害の人は、実に多くの生きづらさを抱えているものです。
ここではその一例を挙げていきます。
些細なストレスでも落ち込んだり不安になりやすい
相手の態度が素っ気なかっただけでも、
「自分が相手に何か気に障ることを言ってしまったのだろうか」
と不安になりやすい傾向があります。
これは他人のネガティブな気持ちや態度の原因を、自分自身と関連付けて捉えてしまっているからです。
思い込みが激しい
相手のちょっとした仕草や態度から、「自分は嫌われているに違いない」とすぐに断定して思い込んでしまうことがあります。
また自分自身について、たとえ小さなミスでも完璧ではない自分のことを、嫌悪しやすい傾向があります。
白黒思考になりやすい
少しでも自分と合わない人がいると、その相手は「嫌いな人」と分類してしまいがちです。
その相手にたとえ良い面があったとしても、それに気付かずに嫌な部分にしか意識が向かないため、人間関係でストレスを溜めやすくなります。
他人の期待を手放し、自分の人生を生きるためには
不安定な愛着スタイルの人にとって、「相手に必要とされるかどうか」は自分の存在価値を左右する大きな問題となります。
そのため他人の期待に応えられないということが、死活問題になってしまうんです。
そうした苦しい生きづらさの問題を和らげるためにはまず、心の安全基地をつくることが重要です。
心の安全基地とは、自分を守ってくれる居場所や心の支えとなる存在のことです。
最終的には自分が自分の親になるしかない
誰しも安全基地となるものが不十分な場合、心の支えとなる人を無意識に求めてしまいがちです。
そのため他人の期待に応えられないことに悩んでしまうのは、自分が他人に対して、
「あなたの期待に応える代わりに、わたしを見捨てず受け入れてほしい」
という期待する気持ちが隠れているからです。
自分自身がありのままの自分のことを認めず受け入れずに、他者に、
「認めてほしい」
「受け入れてほしい」
と期待するからこそ、苦しくなってしまうんです。
自分の人生には、ありのままの自分を必要としてくれて愛してくれる親はいなかった
この現実を受け入れることは、辛く難しいことです。
しかし、それでもその現実を受け入れるためには、自分が自分の親として、他人の期待に応えられない自分でも愛していくしかないんです。
親に期待するから裏切られてしまうのだ。
親に認められたいと思うから、親に否定されることをつらく感じてしまうのだ。
もうこれからは親に左右されるのはやめよう。
あの人たちを親と思うのはやめよう。その代わりに、自分が自分の親になるのだ。
自分が親として自分にどうアドバイスするかを考え、「自分の中の親」と相談しながら生きていこう。
少しずつでいいんです。
いまは他人の期待に応えられないことを恐れてしまってもいいんです。
まずはこれまで「自分を認めることを他人任せにしていたこと」にきちんと気付くことから、その一歩を始めていきましょう。