「他人から責任を押し付けられると、とりあえず謝ってしまう」
「自分の言動をあとから思い出して、自己嫌悪してしまう」
人と接するたびに、いつも嫌な気持ちになってしまい、悩んでいませんか。
もしかすると、その原因はラケット感情によるものかもしれません。
本記事では、ラケット感情の説明と、毒親育ちの人がラケット感情を身に着けてしまう理由と克服法について解説していきます。
ラケット感情とは?毒親育ち克服のために知っておくべきその正体!
ラケット感情とは、
自分を守るために、自ら作り出す「ニセの感情」のことです。
主に幼少期の親との関係性の中で、親に自分を受け入れてもらうために使い始めるものになります。
特に毒親育ちと言われるような人は、下記のような環境に身を置いていた場合が多くあります。
- 親からの要求が強い
- 親の機嫌がいつも不安定
- 子供に対して否定的なことばかり言う
このような環境で育つ人は、自分の身を守るために自分本来の感情を抑えて、親が求める態度・振舞いを行いやすくなる傾向あります。
そして、その際にラケット感情を用いてしまうわけです。
ラケット感情の事例
たとえば下記のような例を考えてみます。
自分が親から失敗して怒られたとき、子供の心の中に「恐怖」や「悲しみ」が生じた。
こうした場合、まず子供は親に、
- 「何でそこまで否定するのか」
- 「そんなに怒らないでほしい」
と悲しみを伝えるものです。
しかし、そうした訴えが親に届かなく、全く相手にされなかった場合、子供はもう悲しみを訴えることをしなくなります。
そして再び何か失敗して親から怒られたとき、今度は別の訴え方として自分のことを嫌悪したとします。
- 「自分がきちんと親の言うことを聞いていなかったから失敗した」
- 「こんな自分だからダメだったんだ」
そうすると、今回は親はきちんと反応して相手にしてくれて優しくされたという場合、どうでしょうか。
こうなると子供はそれ以降、本当の感情である「恐怖」や「悲しみ」をなかったことにし、自分自身への嫌悪感を出すようになります。
この「自己嫌悪」がラケット感情です。
ラケット感情の種類
先の例だけでなく、ラケット感情には他にも色々な種類があります。
- 親にバカにされた(悲しみ・怒り)
→親と一緒に「自分って本当バカだ」と自己卑下したら、親はかまってくれた - 泣きたいくらい辛いことがあった(悲しみ・落ち込み)
→弱音を吐くと否定されたけど、強がったら励ましてくれた - 他人から嫌なことをされた(悲しみ・怒り)
→嫌だと怒ったら逆ギレされたけど、迎合したら逆ギレされなかった - うれしいことがあった(喜び)
→喜んだら周りから嫉妬されたけど、うれしさを抑圧して謙虚に振舞ったら肯定された
この例の中で言えば「自己卑下、強がり、迎合、謙虚な振舞い」がラケット感情になります。
また、ラケット感情の中でも、罪悪感は代表的なニセの感情です。
罪悪感は「自分が悪い」という気持ちを抱くことで「親から許された」と感じるために、多くの人が多用してしまいやすい傾向があります。
社会では、ニセの感情はなかなか通用しない
ラケット感情には色々な種類がありますが、共通して言えることはどれも「不快な感情」だということです。
そして、そんな不快な感情を感じてでもラケット感情を使ったからこそ、幼少期は何とか過ごしてこれたとも言えるわけです。
しかし、問題となるのは幼少期に親に対しては有効だったラケット感情も、成長し社会に出ると適切ではない感情表現となることです。
たとえば、社会に出てからの人間関係の中で、
- のけ者にされて寂しいのに、怒ってしまう
- ヒドい事を言われて悲しいのに、自己卑下してしまう
このように本当は「寂しい、悲しい」と感じているのに、「怒り、自己卑下」というラケット感情を出しても、社会ではなかなか受け入れてもらうことは難しいですよね。
不快なラケット感情を感じた上に、他者との関係もうまくいかないのであれば、誰でも嫌になってしまうのは当然です。
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ラケット感情はいくら感じても消化されない
ラケット感情の一番の問題は、
「どれだけラケット感情を感じて表現しても、その感情は消化されない」
ということです。
たとえば、のけ者にされたことに対して、怒ったとします。
しかし、いくら怒っても、自分の中の怒りやモヤモヤ感はなくなりません。
それは、その怒りは本物の感情ではないため、いくら怒っても満たされないからです。
満たされるためには、本当は何をどう感じているのかを、きちんと把握することが必要です。
把握できないと、自分はなぜ怒っているのか分からないまま、ずっと怒りなどの不快な感情を感じ続けなくてはならなくなります。
これは罪悪感も同じです。
罪悪感の裏にある本当の感情を把握して感じ切るまでは、本当の問題は解決しないんです。
ラケット感情を克服するには
自分の感じている本当の感情に気付くことができれば、意味も分からずに不快な感情を抱き続けなくてよくなります。
ラケット感情の克服のためにはまず、
自分がどんなラケット感情(不快な感情)を使っているかを知る
ことが第一歩となります。
自分が感じている本当の感情を知るためのステップはこのようになります。
- 自分が悩んでいることをリストアップする
- その悩み事で、どんな不快な感情を感じてしまっているかもリストアップする
- その不快な感情を感じる代わりに、自分は何を期待して何を得ているのか
この3つのステップの中で、重要でかつ難しいのは3番目のステップです。
大人になった今でも、ラケット感情を使うことで、
「自分は相手に何を期待し得ようとしているのか」
ということとしっかり向き合うことで、不快な感情は少しずつ軽くしていくことができます。
ここでラケット感情とは、親に受け入れてもらって生き延びるために身に付けざるを得なかったものだということを思い出してください。
たとえば、職場などで特定の人と接する時に、いつも自分に自信が持てなくなる場合、幼少期に、
- 無力感を感じる自分になることで、親から愛された
- 自信なく振舞うことで、親から優しくしてもらえた
こうした経験から、無力感や自信喪失といったラケット感情を使うことを覚えてしまった場合、
それを今でも使って、相手から優しさや好意を得ようとしてしまっている可能性が考えられるわけです。
自分が毒親とどんな関係性だったのかをきちんと知る
毒親育ちを象徴する大きな特徴は、
「子供時代から、ずっと子供として生きたことがほとんどない」
ということです。
物心つく頃から、親と子の役割が逆転し、常に子供の自分が親の役割を担わざるを得なかった場合、
常に自分が背負いきれない責任を持ち、無力感を抱き続ける
という環境の中でずっと耐え続けることになります。
その結果として、「どうしても自分に自信が持てなくなる」状態に陥ってしまうというわけです。
>>>親子の役割逆転とは?「子供時代」を生きられなかった人の特徴
また、そうした環境では親が過干渉な傾向もあります。
日常的な親からの要求やダメ出しによって、精神的に押し潰されている場合も多いんです。
自分に自信が持てない原因をきちんと知ること
自分に自信を持つ、自己肯定感を持つためには、どうすれば良いかと言うと、まずは、
「自分の価値を、親の視点のみで決定している」
ことに気付いていくことが第一歩になります。
毒親育ちの人は、無意識に自分でも気が付かないうちに、
自分に自信を持ってよいかどうかは、親に決定権がある
と思い込んでしまっている傾向があります。
こうして彼女は、しだいに自分が自分をどう思うかではなく、親が自分をどう思うかによって自分を規定するようになっていった。
つまり、自分の行動が親の機嫌をよくしたら自分は「いい子」であり、親の機嫌が悪くなったら「悪い子」だ、ということになったのである。
このことに気付けるかが、毒親育ちの人が生きづらさを軽減するために大切なポイントになります。
そして、少しずつでも、自分の親との関わり合いを思い出すことからも、ラケット感情の克服は始められます!