「自分の育った家庭は、機能不全家族だったのかもしれない」
自分の母親が依存的だったり情緒不安定だったりすれば、誰でも自分の親や家族の真相を知りたいと思うものです。
まして自分がずっと生きづらさに悩み苦しんでいるのならば、なおのことです。
実は親の心理や価値観などを深く知れば知るほど、自分自身への理解が深まっていくものなんです。
本記事では機能不全家族の母親と、その家庭内で育った人の特徴について解説していきます。
機能不全家族とは?
機能不全家族とは、
「子供が精神的に健康に育っていける家庭」として機能していない家族のことを言います。
普通の家庭では、
- お互いが支え合える
- 気持ちの共感をし合える
- 子供を一人の人間として尊重する
こうした人として対等な関係性を築けるものです。
しかし機能不全家族では、子供は子供らしく振る舞うことを許されません。
さらに親に自分の気持ちや欲求を満たしてもらうことよりも、親の機嫌をとったり喜ばせたりすることを優先しなければなりません。
それは家庭の中で、次のようなことが日常的に起こっているからです。
- 母親と父親の関係がギスギスしている
- 母親が何かとすぐに怒り出す
- 子供への愛情や思いやりが欠けている
- 子供への精神的な暴力(暴言や人格否定など)がある
あからさまな子供への身体的な虐待(物理的な暴力や食事を与えないなど)があれば、子供自身も家庭外の人も、
「この家庭には問題があるのではないか」
と気付きやすいものです。
しかし機能不全家族の場合、母親は家族以外の他人の目をものすごく気にしています。
そのため外部の人の目には、一見して立派な家族に映りやすいため、気付かれにくいという特徴があります。
そして「良い親、良い家庭」だと他人から思ってもらうために、家庭内には多くの場合、暗黙のルールが敷かれています。
家族内での暗黙のルールとは
どんな家族の中にも、少なからず家族のみんなが了承している家庭内ルールというものがありますよね。
- 朝食は必ず一緒に食べる
- お風呂に入る順番が決まっている
しかし機能不全家族では、このような一般的な家庭内ルールとは別に、
明示化はされていないが、感覚的に守らなければならない暗黙のルール
というものが存在しています。
それはたとえば、
正直に見たものを見た、感じたことを感じたと、口に出して言ってはいけない
などといったものです。
こうした暗黙のルールの大きな特徴は、そのルールの存在自体を親に確認してはいけないことになっているというところにあります。
つまり子供自らが、親の機嫌や反応、家庭内の空気を常に読んで察していかなければならないわけです。
そして特に機能不全家族では、次に挙げる3つの暗黙のルールが課されやすい傾向があるんです。
(親に都合の悪いことを)他人に話してはいけない
家族や親のことでたとえ「何かおかしい」と思っても、それを他人に言ったり相談したりしてはいけないということです。
それは他人の意見を通じて、子供が親への疑念を抱いてしまったり、家庭の問題が外部の人に知れてしまったりする可能性があるからです。
(親に都合の悪い感情を)感じてはいけない
親への不満や疑念が生じても、その気持ちを感じたり表現したりしてはいけないというルールです。
子供がネガティブな気持ちになるというのは、機能不全家族の母親にとっては自分を困らせることであり、また子供から責められているとしか捉えられないためです。
他人を信じてはいけない
これはどんなに辛く苦しくても、親以外の人間を頼ってはいけないというものです。
親は子供に、親の考えや意見・価値観だけが絶対的なものだと思い込ませています。
それに親自身にも見捨てられ不安が強くあるため、子供を親だけに依存させたいわけです。
こうして機能不全家族で育つ子供のほとんどは、精神的に孤立させられてしまいます。
また機能不全家族に限らず、子供は基本的に母親とのふれあいを通じて、社会のルールや人間関係のあり方を学んでいきます。
- 自分以外の「他人」というのは、どのような存在なのか
- 他人にどのように振る舞うことが正しいことなのか
このような社会性を精神的に成熟した母親から学んで身に付けることができれば、子供は家庭外の社会に出てからも自立して生きていくことができるでしょう。
しかし、
精神的に孤立した状態で、社会性というものをたった一人の社会性の欠けている母親だけからしか学べなかった。
こうした場合、子供が大人になっても生きづらさに苦しみ続けてしまうのは、当然と言えます。
では社会性の欠けている母親には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
機能不全家族にいる母親の特徴
家族として機能不全を起こしている家庭で育つ子供の苦悩や孤独感は、想像を絶するものです。
そんな生きづらさの主な原因には、やはり親が大きく関係しています。
そして機能不全家族にいる母親には、次のような特徴にあります。
- 子供の気持ちに寄り添って共感するということができない
- 親としての役割を放棄している
- 世間体ばかりを気にして、現実の子供を無視する
- 自己否定感や存在不安がある
- 子供に対して過干渉、もしくは無関心
- 子供が精神的に自立することを許さない
- 他責的、他罰的
- 子供に精神的に依存する
こうした特徴だけを見ると、まるで母親には悪意があって子供に上記のような悪態をついているようにも見えますよね。
しかしこの一つ一つの特徴には、きちんとした心理的な要因があるんです。
ここからはそんな母親の本質的な特徴と原因について見ていきましょう。
1.子供を利用して安心感を得ようとする
多くの機能不全を起こしている家族の親は、自分の気持ちに意識を向けて自分で自分の感情をきちんと消化することができません。
- 何かに腹が立っても、自分一人でその怒りを鎮めることができない
- 不安になったり苦しい気持ちになったりしても、どうすればいいのか分からない
その理由は、親自身が子供の頃から自分で自分の感情を消化するという経験をしたことがないからです。
多くの普通の家庭で育つ人は、子供時代に親から、
- 自分の気持ちに寄り添ってもらう
- 辛さや苦しさに共感してもらう
こうした経験を積むことで、ネガティブな感情との向き合い方や消化の仕方を学んでいきます。
そして学んだ方法を、今度は自分が親になったときに子供にも教えていけるわけです。
しかし機能不全家族の母親の場合、そもそも自分の親にも心理的に寄り添ってもらった経験がほとんどないことが多いんです。
そのため子供に自分の機嫌をとらせたり気を遣わせたりすることでしか、自分のネガティブな気持ちを鎮められません。
これは見方を変えれば、親が親としての自分の役割を放棄して、子供に親の親代わりをさせているということです。
>>>親子の役割逆転とは?「子供時代」を生きられなかった人の特徴
2.建設的な話し合いができない
機能不全家族の親は、基本的に自分に自信がなく自己肯定感が低い傾向があります。
それは親自身も自分の親から言葉の暴力や人格否定をされていて、ありのままの自分を受け入れてもらった経験がないことが多いからです。
そうしたことにより他人のちょっとした態度や言葉に傷つきやすく、何かと「自分を否定された」と捉えやすい特徴があります。
そのため子供や他人から例えば、
「自分の話をさえぎらずに最後までちゃんと聞いてほしい」
こうした意見を言われたとき、親は「自分が責められている」と受け取りやすく、すぐに感情的になって建設的な話し合いができない傾向があります。
3.子供が精神的に自立することを許せない
機能不全を起こしている家族の母親は、精神的に不安定で自分の心の支えとなるものを持っていないことがほとんどです。
そのため一番身近で立場の弱い子供に、強く依存する傾向があります。
そうした子供に対する依存の一例は、次のようなものになります。
- 怒ったり責めたり不機嫌になったりすることで、子供を親の意に沿わせようとする
- 子供のことをいつまでも「親がいないと何もできない子」で居続けさせようとする
- 子供が反抗期を迎えることを受け入れない
そして子供の場合は、もともと皆が親に依存心を持っているものです。
そのため親と子がお互いに依存し合う関係に陥ってしまうわけです。
この依存関係は、心理学で共依存と呼ばれています。
>>>共依存に陥りやすい人に共通する特徴|束縛し合う関係性の乗り越え方
4.子供に完璧を求めながら、同時に劣等であることを望む
自分に自信がなく情緒不安定な親ほど、子供に対して矛盾する2つのことを同時に要求しがちです。
具体的には親の心の中に、次の2つの気持ちが同時にあるということです。
「子供に非現実的なほど完璧な人間になってほしい気持ち」(例:成績優秀で社会的に成功して、思いやりもある人格者のような存在)
「親の劣等感を癒すために、子供にダメ人間になってほしい気持ち」(例:自分に自信がなく、成績も振るわず、落ちこぼれのような存在)
精神的に未熟な親の場合、ある時には子供の少しの失敗でも許さず叱りつけ、
またある時には、子供が何かを達成できると、親は嫉妬心をあらわにしたり不満そうにしたりしがちなものです。
そんな矛盾する態度をとられていれば、子供は誰でも混乱してしまいます。
このような相反する2つのメッセージを含んだコミュニケーションは、ダブルバインドと呼ばれています。
このダブルバインドは、モラルハラスメントの一種でもあります。
>>>ダブルバインドとモラハラは密接な関係!その事例と対処方法
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機能不全家族で育ったことによる悪影響
精神的に未熟な母親は心理的に溺れているような状態で、そのために子供に依存してしがみついています。
ではそんな親に育てられた子供は、どんな影響を受けてどんな特徴を持ちやすいのでしょうか。
- 母親を含む人間全般に対して、安心感や信頼感を持てない
- 自分の存在価値を他人に委ねてしまう
- 「何でも自分が悪い」と自己関連付けをしてしまう
- 親密な人間関係をつくれない
- 心の底に生きることへの無意味感を持ちやすい
- ネガティブな感情を一人で処理できない
- 他人に興味や関心がない
- 適切な自己主張ができない
- 見捨てられ不安が強い
- 反抗期がない
- いつも自分のことを後回しにして相手を優先しがち
- 我慢強い
実はこうした特徴は、母親も同じものを持っている可能性が高いんです。
機能不全家族は代々、親から必要とされず愛されずに育つために自分一人で自分を支えられません。
だからこそ自分の心を、自分の子供に支えさせようとします。
そうすると、そうして親を支えた子供もまた、自分一人で自分を支えられないため、将来自分の子供に自分を支えさせようとしてしまいます。
そうして機能不全家族は世代を超えて引き継がれてしまうんです。
母親からの自立していくためには
機能不全家族の母親はいわゆる「毒親」であると言えるほど、子供にとっては悪影響が大きい存在です。
だからこそ毒親育ちの人は大人になっても、なぜか精神的に自立できずに苦しんでいる場合が多くあるんです。
そして機能不全家族で育った人は、反抗期を経験できずに成長することがほとんどです。
それは毒親と呼ばれる親の場合、子供の反抗期を受け止められるほど精神的に成熟しておらず、心の余裕も全くないためです。
毒親からの影響を少しでも和らげ、自立心を育んでいくためには、
親から奪われた「反抗期」を今からでも少しずつ取り戻していく。
それが精神的な自立に向かって進んでいくための、大きな一歩になるんです。